ツジと結子は同じ大学を一般入試で受ける予定で、試験自体はまだもう少しだけ先になる。

試験を直前に控えた有斗を気遣うツジに、わたしも顎を引いた。


これまでにもたくさんの視線を集めていた有斗は、きっともっと注目されていくのだろう。

有斗が評価されて嬉しい反面、遅くに帰ってきては疲れを滲ませていた姿を思い出して複雑な気持ちにもなる。

目を眇めて見るけれど、有斗は変わらず夢の中だった。




有斗は大学の一次試験をあっさりと通過し、気付けばドラマの放送が始まる10月になっていた。


「いよいよ今日からじゃん」

「ちゃんとリアタイするからね〜」


授業が終わり、ツジと結子と並んで昇降口を目指す。

楽しげに話す2人に有斗は難しい顔を返した。


「いいよ見なくて」

「いやいや、何を仰います。友達の晴れ舞台だよ?」

「ハレブタイって、発表会じゃねんだから」


難しい顔に照れが混じっていることは、結子にもツジにもお見通しだ。


「でも、いきなりゴールデンタイムのドラマだもんなー。演技だって初めてだろ?」