わたしは意を決して有斗の浴衣の袖を引いた。

背伸びをして、今度はわたしが有斗の耳に顔を寄せる。


「有斗って、わたしのこと、ほんとに好きでいてくれたんだね」


わたしが言うと、有斗は弾かれたように体をのけ反らせた。

耳に手を当て、驚いたようにわたしを見る有斗の顔が真っ赤に染まっているのを、花火が容赦なく照らし出す。

余裕のないその顔に、思わず破顔してしまう。


「いきなり何だよ……!」

「ゴメン。でも、ようやく実感したの」


花火の音にかき消されないよう、交互に顔を寄せて話した。

わたしの左隣には、菊池達4人が並んでいる。前にも後ろにも、周りにはたくさんの人がいる。

無数の人の気配を感じながら交わす、2人だけの会話。


「今更かよ! おせーよバカ!」

「ごめんってば!」


花火は絶え間なく打ち上がる。

わたし達の声は、わたし達以外には聞こえない。


「そーだよ。好きだよ。昔からずっと、すっげー好き」