「ちょっと有斗……!」

「むかつく」


くぐもった声が耳元で低く響いた。

じたばたと暴れて抵抗してみるけれど、びくともしない。


「行くのやめろよ」

「無理言わないで。前から約束してたんだから」

「……」

「……2人で行くわけじゃないんだよ? 仲良くなったメンバーで一緒に行こうってなっただけだし」

「……」

「真由美ちゃんとメグちゃんもいるし。いつも結子とツジといるのと変わらないよ」


有斗に組み伏せられたまま、わたしは必死に弁明している。弁明する必要があるのかはわからないけれど。

しかし、有斗が退いてくれる気配は1ミリもなかった。


「……決めた」

「え?」

「俺も行く」

「……はい?」


耳を疑うような発言に、思わず遠慮ない声が出る。

有斗はようやく顔を上げたかと思えば、ぎらりと怪しい光を瞳に宿して、わたしを静かに見下ろした。


「その日仕事がどうなるかわかんなかったけど、こうなりゃ気合いで空ける。ぜってー空ける」

「そ、そこまでしなくても……」

「行くから。そいつらにも言っといて」