「有斗は、面倒くさがりに見えて結構真面目だよね」

「……なんだよ、バカにすんなよ」

「褒めてるんだよ」


空いているほうの手を、重ねられた有斗の手のひらの上に更に重ねる。

少しでも、有斗が抱えるものが軽くなりますように。


「きっかけはなんであれ、ちゃんとやるからお仕事をもらえるんだよ。わたしは芸能界のことはよくわかんないけど、適当にやって通用するほど甘い世界でもないでしょう?」


中学時代に所属していたサッカー部でも、有斗は2年生ながらレギュラーだった。

練習なんて面倒くさいと言いながら、陰で努力していたことを知っている。

勉強だってソツなくこなすけれど、溜まった課題なんかを夜遅くまでしたりすることも知っている。

有斗はちゃんと、努力の人だ。

そして、ちゃんと向き合うからこそ、いつの間にか立たされていた今の状況に、少し疲れちゃってるんだと思う。


「わたしは、有斗のそういうところを誇りに思ってるよ」


両の手に力を込める。

ぎゅっと、ちゃんと、伝わるように。