「お話の意味が、よくわからないのですが‥‥」

 念のため、しらばっくれてみる。

「安田さんが誠太郎さんのマンションで暮らしてることは調べがついていますので、とぼけなくても結構です」

 うわー‥‥これってつまり、興信所使ってるってことだよね?一体どこまで知られてるの?ほぼ全部だと思った方がいいのかも。

「そうですか‥‥私と岩泉君が別れたら、彼はあなたと結婚するんですか?」

「ええ。私と誠太郎さんはかなり前から結婚の話が出ていましたので、問題さえなければすぐにでも」

「なるほど‥‥その問題が私ってことですね。ご存知だとは思いますが、お付き合いを始めたのはつい最近なので、彼とは別れ話をしたことがないんです。結婚するにあたって、同棲までしてる私という存在をどうするつもりなのか、お二人でちゃんと話し合われましたか?」

「もちろんです。その結果、こうして私が安田さんと話をしに来てるわけですから」

「それは話し合った上で、岩泉君が私と別れることを望んでいる、という意味でいいんですよね?」

「だから、そうだと言ってるじゃないですか」

「いや、さすがに彼と話さずに別れるのは無理ですし、一応確認したくて。私は望まれて彼とお付き合いを始めたつもりだったので、あなたの話が事実なら私は騙されてたわけですし、例え頼まれなくても彼とは別れます。ただそうではない場合、そう簡単に彼が別れてくれるとは思えなくて‥‥本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫って‥‥?」

「岩泉君が本当にそれを望んでいるのかってことですが‥‥」

 十中八九望んでないとは思うけど、それで私が別れ話なんてしたら、酷いめに合うのは彼女だけではないだろう。岩泉君がヤンデレ化しそうで恐ろしい。

「あなたが誠太郎さんのマンションを出て、彼との連絡を断てばそれで済む話では!?」

 あー‥‥嘘がばれたくなくて、必死だな。

「彼は私の実家の場所も知ってますし、両親とも挨拶をしています。第一、勤務先が同じなので連絡を断つのは難しいですね‥‥それとも、私に仕事を辞めた上で家族との縁も切れと言ってます?」

「私を脅してるつもり!?いくら渡せば黙って別れてくれるのよ!?」

「いやいや、お金の問題ではないですし、むしろ脅されてるのは私の方では?」

「もうわかったわ‥‥この話はなかったことにしましょう。私はあなたに会ってないし何も話してない。それでいいでしょ?」

「‥‥‥‥まあ、あなたがそれでいいなら」

「あなた、後悔するわよ‥‥」

 お嬢様がまたまたドラマの中でしか聞けないセリフを披露して去って行く‥‥サービス精神が旺盛過ぎるな。