これからは大好きな彼と家族になって、この子を育てられる。

そう思っていたのに。


「ごめん。その子は、一緒に育てられない」


その一言は、まるで大きなハンマーで後頭部を殴られたような衝撃だった。

問いただすと、今職場でいい感じになっている女性がいるんだとか。
私が夜遅い日は内緒で彼女と会っていて、『今の彼女とは絶対別れる』と伝えていたらしい。

子どもが出来たと聞いても、彼の心を動かすことはできなかったようで、私は逃げるように実家に帰った。

この子は悪くない。
だからこそ、産んで育てると決めた。

それなのに――。
運命とは残酷なもので、そう簡単にはいかなかった。

妊娠4ヶ月目に差し掛かったとき、勤務中に激痛に襲われ藍木総合病院に救急搬送。
産婦人科医がお腹にエコーを当ててくれ検査をしてくれたけれど、その間ずっと神妙な面持ちだった。

そして……


「流産しています」


そう告げられたときは頭が真っ白になったのを、今でもよく覚えている。

神様は、私になにも残してはくれなかった――。

大好きだった彼も、赤ちゃんも。
すべてを失ってしまった私はホテルでの勤務を辞め、今に至る。

激務をしてた私が悪かったのかもしれないと、自分を責め続けていた私を励ましてくれたのは美菜子さん。