一緒に行った記念に?最後のイルカショーの思い出に?なんて言って渡せばいいか分からなくなった。

「ん?」

青波が急かすもんだから、水色のイルカをとって差し出す。

「妹さんに渡してください。お洋服を借りちゃったのでそのお礼にと思いまして」

スラスラ出てきた言い訳。
青波に渡したかったのに、残念ながらもっともらしい口実が思い浮かばなかった。


「妹に?」

青波は困ったように笑った。

え、妹さんの趣味じゃないのかな?

どうしよう。取り消したい。



だって、青波は今、絶対に私から目を逸らしたもん。

手のひらを握り、イルカを隠す。


「や、やっぱり、いらないですよね…」


声が震える。
たかが誘拐犯に拒否されたくらいで大したことないのに、動揺してしまった。