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 学園の講堂のロビーに、4人の麗しの貴公子が集まっていた。令嬢たちの憧れの的である、ルイとエリオレット、サイラス――ロアンだ。ロビーの大きなソファにルイがゆったりと腰を下ろし、それを他の3人が囲っている。

 4人の美男子の集まりは、絵画の一場面のような華やかさで、また圧倒する雰囲気があるため、ロビーに立ち寄った生徒たちは近寄ろうとせずに遠巻きでちらちらと眺めた。そして、一体どんな雑談をしているのだろうと内緒話をする。

「……気になるな」

 神妙な面持ちで、ルイが呟く。ルイが気になっているのは、ナーウェル姉妹のこと。
 ルイだけではない。他の3人も皆、彼女たちのことで頭を悩ませている。

「ペトロニラはルサレテ嬢に日ごろから虐げられ、階段から突き落とされたと訴えた。彼女は嘘をつくような娘ではないと信じて疑わなかったが……」

 ルイの言葉に、エリオットとサイラスが続ける。

「私には……ルサレテ嬢が悪人のようには見えません」
「……だな」

 ロアンも彼らと同じ意見だった。ペトロニラの訴えを信じて、ルサレテに軽蔑さえ感じていたが、実際に関わってみると、真面目で、優しい印象を受けた。
 むしろ、階段から落ちた事件を境にペトロニラの自己中心的で勝手なところが露見するようになった。
 以前のペトロニラは、困ったときにすっと助けてくれるような、不思議なくらいに気遣いができる人で、ふいに見せるわがままなところも、妹みたいで可愛いと感じていたのに。

 一方、ルサレテはペトロニラに悪評を広められても学園に来て、好奇の目に晒されても弱音を吐かずに耐え忍んでいる。ペトロニラに責められても、黙って我慢していて、健気に思えてくる。
 そして、お人好しな性格が隠せないところも、大人しそうに見えて意外と物怖じせずにはっきり言うところも、ロアンには好ましく見えた。

 ロアンは腕を組みながら言った。

「真実を知っているのは、ペトロニラとルサレテの当事者2人だけ。現段階で犯人を断定するのではなく……もう少し様子を見る必要があると思う」

 ロアンたちはずっと、ペトロニラのことを妹のように可愛がっていた。けれど、ここに来て彼女への信頼が揺らぎ始めている。