血の繋がった妹は、わたしが小さい頃から受けてきたこの家での待遇を、きちんと理解しているのかはわからない。

むしろ、理解しなくても良いと思う。

わたしが家を出てひとり暮らしをしていたのも、ただ高校が遠くて通学に便利だからとでも両親に言われていたのだと悟る。


それでいい。

でも、逃げ場のない檻の中で、この子はこれから悪に触れることだってある。

そんなときに、純恋に手を差し伸べてくれるひとが、わたしにとっての吾妻くんのようなひとが出来ることを、いまは願うことしか出来なかった。


「大丈夫。またお父様に内緒で会おうね」


父に逆らうことなど、背くことなど、いままでは考えになかった。

でも、今はなにも怖くない。


ニコッと微笑むと、純恋は少しの間黙ったあと、すぐに無邪気な笑みを向けてくれた。


「うんっ! そういえばお姉ちゃん、前より綺麗になったね」

「えっ……、そう?」

「そうだよ! きっと、その結婚相手の方のおかげだね」

「う、うーん……そうなのかな?」