(それなりに可愛い顔をしているのに。おつむの方は残念なことになっているようね)

 あわれみの視線を送ると、女生徒は苛立ったように舌打ちをした。田舎育ちのせいでマナーもなっていないとは、この学園も品が落ちたものだ。

「もういいわよ!」

 上ってきた階段の間際に立っていた女生徒が、言うなり一歩足をずらした。バランスを崩して後ろに倒れそうになる。

「きゃあっ、ハナコさま、何をなさるのぉ!」
「え、ちょっとあなた……!」

 棒読みで叫んだ女生徒の腕をとっさに掴む。助けようとか助けなくちゃとか、そんなこと考える暇もなく気づけば体が勝手に動いていた。

 転げ落ちそうな女生徒を力の限り引っ張り上げる。反動で彼女との位置がぐるっと正反対に入れ替わった。

 遠心力で投げ出される。体は背中から落下した。

 段上で見下ろす女生徒。何かを叫んでいるジュリエッタ。騒然となった生徒たち。

 そんな光景がやけにスローモーションで遠ざかる。

(あれ? なんかこのシーン、前にもどこかで見たことない?)

 視界に入る者たちすべての輪郭が、不自然にぶれた気がした。みんな同じ立ち位置にいるのに、服装だけが違う物のように二重に見える。

 そのとき頭の中で何かがフラッシュバックした。

 ――そう、あの日、華子(わたし)が死んだときの出来事が