ずっこけそうになったとき、壁の鳩時計がポッポーと鳴き出した。

「おおこれはいかん、職員会議に遅れるところでしたな。わしは行きますゆえ、これにて失礼をば」

 言うなりおじいちゃん先生がその場から一瞬で掻き消える。

「て、転移魔法!?」

 思わず叫んじゃったよ。
 保健室から職員室までって、結構な距離があったはず。

 転移魔法は魔力の消費も激しくて、能力に応じて移動できる距離も変わって来るんだ。

 ヨボじい、何気にすごい人なのかも。
 半分ボケちゃってるみたいだけどねっ。

「じっちゃん、いるか? また怪我しちゃってさ」

 がらっとドアが開いて、慣れた様子で男子生徒が入ってきた。

 ひぃいいいぃぃっ、マサト・コーガ!
 なんであんたがこのタイミングで登場すんの!?

 マサトはもうひとりの攻略対象だ。

 一難去ってまた一難。
 こりゃまた未希にどやされる!