「ふっ、ハナコはそんな心配をしていたのか。魔力はなくとも国を治めることはできる。魔法の行使など、下々(しもじも)の者に任せておけばいい」
「そういう問題ではありません。わたくしはもっと広い視野で物事を見ることが大事と申しているのです。多くの令嬢たちと時間を共にすることで、わたくし以外に適正のある方が見つかるはずですわ」
「ふむ、ハナコがそこまで言うのなら考慮しよう。手始めに、ハナコともっと時間を共にせねばな」

(だーかーらーっ、なんで王子のお前が悪役令嬢(わたし)に迫って来るんだよ!)

 ああ言えばこう言ってくる山田にブチ切れ寸前だ。いや待て華子、早まるな。本で撲殺するのは最終手段にしなくては。

「ハナコ様、お探ししましたわ。今日はふたりでパジャマパーティーを……あら、シュン王子もご一緒でしたの」
「ジュリエッタ!」

 あーん、持つべきものは友! ナイスタイミングだ、親友よ。

 駆け寄って、勢いでジュリエッタに抱きついた。さりげなく肘で押し返される。何そのリアクション。微妙にちょっと傷つくんだけど。

 ゲーム内でジュリエッタはハナコの取り巻きモブ令嬢の役どころだ。

 しかし現在、中の人はオムツをつけたころからの幼馴染の未希だったりする。このゲームをやり尽くした、バッドエンド回避のための心強い参謀(さんぼう)だ。