山田さえいなければ、学園生活は平和そのものだ。

 日々怯えて過ごすなんて、わたしらしくなくてなんだか嫌だった。
 それに放課後に未希と落ち合って今後の対策を練る予定だ。
 大丈夫。わたしには味方がいるんだ。そう思って一日笑顔で過ごした。

「ごきげんよう、ジュリエッタ」
「ごきげんよう、ハナコ様。サロンの使用許可をいただいておりますから、そこでゆっくり休憩いたしましょう」
「ありがとう、いつも気が利くわね」
「ハナコ様のためですもの、お安い御用ですわ」

 あー、そうそう、ジュリエッタってこんな感じだったわ。
 普段は出しゃばらずおとなしくしてるのに、必要なときはさりげなくフォローを入れてくれていた。

(これって未希が陰ながらわたしを見守ってくれてたってことだよね?)

 記憶がないままのわたしでも、きっと心配してくれてたんだ。
 多分、そんなこと聞いても、未希は全否定してくるだろうけど。

「さてと、どう? 久しぶりの学園は?」
「んーちょっと窮屈だけど、やっぱ気分転換になっていいね」
「そ。それはよかった」

 ここは個室の鍵付きのサロンだ。事前に誰が使うかを申請すれば、時間貸ししてくれるシステムだった。