こちょこちょと眉間のシワをくすぐると、山田ははっと目を見開いた。

「この顔は怖いのだったな」

 極道顔が一瞬でイケメン天使に変化する。

(この理想の顔を独り占めできるのはいいんだけど、やっぱこの瓶底眼鏡がネックなんだよね……)

 奪った眼鏡のつるを回して、くるくるともてあそぶ。
 コンタクトとかこの世界にもあればいいのに。せめてもうちょっと薄いレンズにできないもんかな。

 そういや前にロレンツォが言ってたっけ。
 イタリーノ国はガラス工芸が発展してるって。

「早速なのだがハナコ。わたしたちのことをモッリ公爵に話して、早急に婚約を済ませてしまいたいのだが……」
「あら、シュン様。わたくしたちはまだ学生ですもの。しばらくはまだ学業に専念すべきですわ」

 留年って言っても、三学期分の授業だけ受ければいいって話なんだけど。
 せっかくだから魔法学をしっかり学びなおそうかと思ってるんだ。
 リュシアン様とももっといっぱいお話がしたいし、あと一年、思いっきり学生生活を満喫しなくちゃね。

「しかし王妃教育などもあるだろう。ハナコも城に住めばいい。一日も早く一緒になりたいんだ」

 ぎゃっ、ちょっと話が進みすぎぃ!
 このまま山田に流されてったら、自由な時間がなくなっちゃうんじゃ?