「もう、シュン様ったら」

 山田の腕から抜け出すと、そこは学園の時計塔にある小さな展望台だった。
 窓もなくて吹きさらしだけど、学園が見渡せてとってもいい眺め。

「まぁ、シュン様、ご覧になって! 桜並木がとってもきれい……!」

 一緒に記念撮影したり、思い出に浸るようにゆっくり歩いたり。
 あっちでは下級生が卒業生に花束を渡してる。
 桜が舞い散る中、みんなそれぞれの卒業を迎えてるんだ。
 そんな一角で、女生徒に囲まれてる誰かが見えて。

(やだ、マサトってば、卒業生からいっぱいお菓子もらってる……)

 マサトのヤツ、案外人気あるじゃない。
 一緒に卒業するつもりが、置いてく羽目になっちゃったんだもんね。片思いしてた令嬢なんかは、さぞかしガックリしちゃったろうな。

 あ、マサトがこっちに向かって手を振ってる。
 口元が、おーい、ハナコって言ってるみたい。

「シュン様、あちらでマサトが……」