どうして忘れていたんだろう。
 そう思えるくらい山田との思い出は鮮明で。

(これはハナコの記憶? それともわたしの記憶?)

 もうどっちでもいいか。
 わたしはハナコで、ハナコはわたしで。

 あの日の約束通りに、生まれ変わったこの世界で山田はわたしを見つけてくれたんだ。
 あ、うれしくて、なんか涙出てきた。

 ふっと意識が浮上して。

(ゆめ……?)

 なのに実際に涙は流れてて。
 いまだ見慣れない天井がぼやけて見えた。

 薄暗い病室はちょっと不安だ。
 さっき見ていた山田とのしあわせな記憶も、(かすみ)がかかったみたいに思い出せなくなっていく。
 そのとき、あったかい何かがこの手をきゅっと握り返してきた。

「シュン様……」