ん? これってば年を取った山田かも?
 その山田がベッドに横たわったわたしの手を握ってる。

 山田の手はしわしわで、握られてるわたしもやせ細った感じのしわしわだった。
 BGMみたいに、無機質な電子音がわたしの鼓動を伝えてて。
 ここ、病院なのかな? 点滴の管が腕につながってるし。

 おじいちゃんになった山田を見上げながら、わたしの口がひとりでに開いていく。

『わたし、先に()くけれど……』
『いやだ、華子さん、俺を置いて逝かないで』

 瓶底眼鏡の下から、透明なしずくがしたたり落ちてくる。
 昔からそう。
 山田ってば、ずっと泣き方変わらないね。

『この不思議な世界に来て、あなたと会えて……わたし本当にしあわせだったわ』
『そんなこと言わないで。これからもっともっとしあわせにするから』
『だったら、生まれ変わってもわたしを見つけて。わたし、あなたを待ってるから……』

 ああ、そっか。
 これは華子(わたし)になったハナコの記憶なんだ。

 階段から落ちて、入れ替わって、山田と恋に落ちて、ずっと人生を共にして。
 日本で過ごしたハナコの記憶が、どんどん頭の中に流れ込んでくる。