山田の手前、ああは言ったけど。
 死の気配っていうの? それが近づいてきたようで。
 あれだけ激しかった痛みが、ウソみたいに楽になってきた。

「ジュリエッタ……?」

 いつの間にいたのか、未希がわたしの肩に手を当てている。
 癒しの光があったかい。
 ダンジュウロウもそこにいるから、ここまで連れてきてもらったのかな。

「なに? 泣いてるの? 未希が泣くだなんてやっぱり夢か……」
「うっさいわね。いいから華子は黙ってて」

 やだ、素が出てるよ、ジュリエッタ。
 笑いかけて、未希の指先が震えてるのに気がついた。
 そっか。わたし、そんなに危険な状態なのか。

 血の気の引いた未希を、後ろからダンジュウロウが支えてる。魔力切れを起こしそうで、未希もギリギリなんだって伝わってきた。

「ねぇ、もう助からないんだったら、そんな無理しなくていいよ?」
「黙ってろって言ったでしょ? ちょっと多く血が流れたってだけよ。アホな心配してないで、おとなしく気絶でもしてなさい」

 そうしたいのは山々だけど。
 痛いのか、熱いのか、眠いのか、寒いのか。
 自分でも良く分からない感覚なんだ。

「まったく、あんたってば無茶ばかりしてっ」
「ごめん……気づいたら体が動いてたんだ……だから、ごめん……」

 うわごとのようにつぶやいて。

 遠くで山田の声がする。
 ああ、生きている。
 わたしの大好きなひとが。

 満たされて、息を深く吸い込んだ。