促されて、仕方なく歩き出す。
 もう一回振り向くと、画面は小さすぎてほとんど見えなくなっていた。

(でももし、本当に山田が撃たれて死んじゃったら……?)

 言いようのない不安がこみ上げる。
 収まらないどころか胸騒ぎはどんどん大きく膨らんで。

「わたくし、シュン様の元に行かなくちゃ……」
「いまさらなにを言っている? あんたは俺とイタリーノに行くんだ、ハナコ」
「ダメ……!」

 乱暴にロレンツォの腕を振り切った。

「ごめんなさい、リュシアン様。わたくしイタリーノには行けません」

 こんなドタキャンの仕方、あり得ないでしょ。
 自分でもそう思ったけど。
 気づいたときにはもう、そんな言葉が口から出てた。

 ロレンツォの顔に泥を塗るだとか、リュシアン様のメンツをつぶすだとか。
 ただの思い違いだったらどうしようとか、そんなことすら考えに浮かばなくて。

「ケンタ、お願い! わたくしをシュン様のいる場所まで連れていって……!」
「えっ、だけど姉上」
「いいから、早く! シュン様がどうなってもいいって言うのっ!」

 わたしの剣幕に押された健太と手をつないで、ふたりで空間を飛び越えた。