未希のひと声で心を決めたけど。
 いろいろと不安をぬぐい切れないまま、旅行の当日を迎えてしまった。

「姉上、もう馬車出るけど準備はいい?」
「ええ、ケンタ。つき合わせてごめんなさいね」
「見送りくらいどうってことないよ。ユイナも今日は予定あるしさ」

 ユイナはいま、国の式典に駆り出されてる。
 国家反逆罪の汚名を返上すべく、聴衆にまぎれて警護を担当するって話。

「ケンタは心配じゃないの?」
「ユイナの魔法の腕は信頼できるし。それに今回は疑いを晴らす意味が大きいから、ユイナ自身がしっかりやらないと」

 国に逆らう意思はないよって示さないとならないのか。
 ゲームのヒロインのはずなのに、ユイナも難儀な立場だな。

「ユイナの無限ループ、これで終わるといいわね」
「ありがとう、姉上。ゲームのエンディングの先も、ユイナと生きてけるって俺も信じてる」

 健太もゆいなも、自分の人生歩んでるんだな。
 ゲームの世界だからって、わたしももっとしっかりしなきゃ。