「と、とにかくロレンツォは留学のきっかけになったってだけだから」
「じゃあ一体なにを迷ってんのよ? 華子、昔から留学が夢だったじゃない」
「それはそうなんだけどさ……」

 事態はもっと複雑で。
 わたしもいまだに混乱中だし、何から話せばいいのか分かんないよ。

「あんたらしくないわね。なにが問題? イタリーノなら華子好みのイケメンが山ほどいるだろうし、むしろウェルカムって感じじゃないの」
「わたし好みのイケメン……」
「そ、理想の天使、探すんでしょ?」
「りそうのてんし……うっ、み、未希ぃ……っ!」
「えっ、ちょっと、なんなのよ華子っ」

 半泣きで未希に抱き着いた。
 だって山田が、山田が、山田がぁっ。

「……シュン王子が理想の天使?」
「うん」
「でもあんた、王子の素顔は極道だったって」
「あれは目が悪すぎてしかめっ(つら)してただけだったの! 山田の本当の素顔はわたしの理想のイケメン天使だったのよっ」
「なんだ、よかったじゃん」

 あっさり言って、未希はしがみつくわたしを無理やり引きはがした。