立ち尽くす山田の後ろに回り込んで、歩幅(ほはば)で距離を確かめた。
 何をしてるか分からないように、スカートの影でティッシュ玉を地面に置いて回った。
 芝生のお陰で山田からは置いたボールが見えないみたい。これはかえって有利かも?

 ボールの位置がカギだから、慌てないで慎重に。
 落ち着け、落ち着け。大丈夫、まだ時間は残ってる。

 配置し終わって、砂時計に目を向ける。
 落ちた砂は半分以上。だいたい残り二分ってところかな。
 下準備は完璧って感じだし、攻撃は一分あれば十分だ。

 その間、山田は何もせずに姿勢よく立っていて。
 その余裕の表情、いますぐ崩してやるから見てなさいよ。

 正面に戻って、深呼吸で精神統一。
 この勝負に勝ちさえすれば、ゲームの世界は終わるも同然。卒業イベントを待たずして、前倒しできるってことだから。
 悪役令嬢として最後の聖戦、全身全霊かけてやったろうじゃないの!

 覚悟を決めて、山田に向け両手をかざした。