図書館を出て帰りの馬車の中、今日はゆいなとふたりきり。
 健太は生徒会の仕事があるって置いてきたんだけど、ゆいなは最早(もはや)モッリ家に入りびたってるって感じ。
 で、さっきからやたらとゆいなに見つめられてて。

「なに? わたくしの顔をじろじろと」
「だってハナコ様、ロレンツォ王子の好感度爆上がりしてたから、どんな手使ったのかなぁって気になって」
「やめてちょうだい。ロレンツォ様の態度はシュン様へのライバル心の現れなだけよ」

 そうそう。ロレンツォがちょっかい出してくるのは、わたしが山田に気に入られてるってのが理由なんだよね。張り合ってるだけで、別にわたしに好意を持ってるとかじゃないと思うんだ。

 留学に誘ったのだってその一環なんじゃないかな?
 肩身の狭い思いをしてきたこの国で、最後に王子のお気に入りをさらっていけばそりゃ痛快な思いができるだろうし。

「そんなことないですよぉ。廊下で窓が割れた日は好感度20くらいだったのに、さっき見たら90パー越えてましたもん」
「え? ユイナあなた、好感度が数字で分かるの?」
「はい、パラメーターで。見ようと思えばゲームとおんなじ画面が出てくるんです」

 それはすごいな、さすがヒロインチート。
 っていうかロレンツォのヤツ、好感度20でわたしを口説いてきてたんか。やっぱり山田への当てつけじゃないの。