ほっと息をついて、山田は柔らかい笑顔を見せた。
 適切な距離感で接してみると、山田ってばかなりできるオトコなんだよね。

「うむ、特に問題はないようですな。では次はハナコ嬢を確認するとしますかな」
「ハナコ、わたしは先ほどの騒ぎの後処理がある。もう行くが、なにかあったらすぐに言ってくれ」
「お気遣いありがとうございます。シュン様もお気をつけて」
「ありがとう、ハナコ。ケンタもわたしと来てくれ」
「はい、シュン王子」

 転移魔法で山田が消えると、それに続いて健太もこの場からぱっといなくなった。

「ちっ、化け物ぞろいでいやがる……」

 ロレンツォのついた悪態(あくたい)が聞こえただろうに、リュシアン様はニコニコ顔でわたしに手をかざした。
 スルースキルって大事だな。大人の余裕を感じちゃう。
 まぁ魔力の弱いわたしにしてみれば、ロレンツォの気持ちも分からないでもないんだけどね。

「ハナコ嬢も問題ないようですな。いま茶でも入れますゆえ、おふたりとももうしばらくゆっくりしていきなされ」

 リュシアン様が奥に引っ込んで。
 ロレンツォとふたりきりにされて、ちょっと微妙な雰囲気に包まれた。

「お座りになってはいかが? 授業をおさぼりになりたかったのでしょう?」

 丸椅子をすすめたのに、ロレンツォってばリュシアン様のひじ置き付きのチェアにどっかりと座りこんだ。
 そういうトコやぞ! やることが子供っぽくて、ホント幻滅するって感じ。