取り巻き令嬢たちを連れて廊下を歩いていたら。
 げ、前方にロレンツォ発見。
 もうすぐ授業が始まるから遠回りもできないし。

 ロレンツォって基本待ち伏せしてくるんだよね。で、いつも腕組んで壁にもたれかかってる。
 攻略対象だけあって絵にはなってるけど、孤高の俺様カッケーとでも思ってんのかしら?

「おい、ハナコ。素通りとは冷たい女だな」
「あら、ロレンツォ様、そんなところにいらっしゃいましたの。わたくしちっとも気づきませんでしたわ」

 ちっ、そ知らぬフリは無理があったか。
 ってか、なんでいつもひとの腕をつかんでくんのよ。

「この手は一体なんですの?」
「こうでもしないとあんたはすぐ逃げるからな」
「逃げるも何も、わたくし授業に遅れたくありませんの」
「ふっ、真面目だな。少しくらいサボっても問題ないだろう?」
「そのようなわけには参りませんわ」

 これ以上サボったら卒業があやういんだってば。
 手を引いても力を強めるばかりのロレンツォ。これは離す気はさらさらないな。
 ああもう、ホントめんどくさい。予鈴はとっくに鳴っちゃったし、取り巻き令嬢たちもオロオロして困ってるし。

「あなたたちは先に教室に戻っていなさい」
「ですがハナコ様……」
「大丈夫よ。わたくしもすぐに行くわ」