「そんな不安定な体勢でこぼしたりしたらどうなさるおつもりですの? わたくし火傷などしたくありませんわ」
「分かった。ハナコ嬢が言うならそうしよう」

 あっさり身を引いたダンジュウロウ。よし、次はお子様マサトを攻略だ。

「マサト、あなたの席は向こうでしょう。ほら、先生のところ、まだお菓子が山盛りよ?」
「お、ホントだ。サンキューハナコ、ちょっとあっちいってくる!」

 瞳を輝かせたマサト、一瞬で向かい側に移動した。あまりの速さに転移魔法使ったかと思ったし。

 てなわけで、だいぶスッキリしたけれど。
 残るは山田とロレンツォ。
 さてこの王子ふたり、どうやって引きはがそうか。

「ハナコ、今度は城でディナーでもどうだ?」
「まぁ素敵。両親とケンタもよろこびますわ」
「いや、わたしとハナコのふたりきりで」
「何を言っている、俺の方が先約だぞ。イタリーノ料理が食べられる店がある。今度そこに連れて行ってやる」
「まぁ素敵。ですが父が許可を出すかどうか……」

 一拍置いて山田とロレンツォはぎりっとにらみ合った。
 ってか、痛いっ。
 ひとの手にぎっといて、ふたりとも力入れないでよ!

「それよりも久しぶりに城の塔に昇らないか? ハナコはあそこからの眺めが好きだったろう」
「まぁ素敵。子供のころを思い出しますわね。風が強くないとよろしいのですけれど」
「見飽きた街を見下ろすくらいなら、俺がイタリーノの話をしてやる。科学技術が進歩した我が国は面白いものがたくさんあるからな」
「心配は無用だ。どんなに風が吹こうと寒かろうと、わたしの魔法でハナコを守ってやれる」