「ロレンツォってかなり強引だから、ゆいなも一応気をつけといて」
「そう思うならゆいなを巻き込むなよ」
「大丈夫よ、ロレンツォはマサトと保健医の先生の間に座らせるから」
「姉ちゃん、保健医まで呼んだの? なんで?」
「大人がいた方が、もめ事も起きにくいでしょ?」

 なんてったってリュシアン様、理事長で元国王だしね。こんなに心強い味方はいないって感じ。

「あ~あ、ロレンツォって顔だけはいい線いってるのになぁ。性格がああじゃなければよかったのに」
「……姉ちゃんってさ、結構矛盾(むじゅん)してるよね」
「は? なによソレ」
「だってそうだろ? 顔さえよければ性格なんてどうでいいって、姉ちゃんいつも言ってるじゃんか」
「それは……」

 確かに今でもそう思ってるけど。

「だ、だってロレンツォはイケメンだけど、わたしの完璧な理想ってワケじゃないし」

 そうよ、イケメンなら誰でもいいってことじゃないんだよ。
 夢に出てきた天使くらいド真ん中(ストライク)だったら、どんなに性格悪くってもオッケーだけど。

「やだぁ、理想の王子様じゃないとダメだなんて、華子先輩、あんがいかわい~」

 むかっ。ゆいなに言われると余計に腹立つんですけど。
 男をとっかえひっかえしてたあんたと違って、わたしは純真無垢(むく)な乙女なんだつうの!