お聞きいたしますとだけ言って、目が合わないよう瞳を伏せた。
 (ほだ)されて元の状況に戻ったりしたら、王妃コースまっしぐらなんてこともあり得るし。
 立ち上がった山田の指先が庭に咲く薔薇に伸ばされた。開きすぎた花びらは、はらはらと崩れるように落ちていく。

「わたしはここしばらくあることに悩まされ続けていた。何者かに思考や感情、行動を操られるという、そんな不可解な現象だ」

 うん、ソレね、ゲームの強制力。
 理由を知らなきゃ悩んでも仕方がないか。

「この話には国の機密も関係しているため、あまり詳しくは話せないのだが……」

 機密って、ゆいなが国に拘束されてた件かな?
 疑惑は国家転覆だもんね。山田も言いにくそうに言葉を探してる。
 その話知ってます、なんて言うわけにもいかないし。でも話が長引くのもめんどいし。

「あの日も疑わしき人物と接触し、調査をしていたところだったのだ」
「その人物とはユイナ・ハセガー男爵令嬢でございますか?」

 山田がはっとわたしを見やった。

「なぜ彼女だと……?」
「似たようなことをケンタから相談されておりました。ですので、もしかしたらと思っただけですわ」
「ケンタが……そうか」

 よかった、うまいこと納得してくれたみたい。
 ユイナ逮捕の件は健太にオフレコって言われてたから、ちょっと危険な賭けだったかも。