未希ばぁちゃん……とつぶやきかけて、冷ややかな視線に凍りついた。嘘です、未希様は大和なでしこ、遠永の日本人形ですっ!

 そのときコンコンと、ドアがノックされた。
 誰だか知らんがナイスタイミング!

 よろこび勇んでドアを開けると、やってきたのは弟のケンタだった。
 ケンタはモッリ公爵家の跡取り息子。その上、前世で華子の弟だった健太にそっくりだったりする。

 ていうか、両親も元の両親と同じ顔してるし、何なら今通ってる学園のクラスメイトも、みんな前世の顔見知りばかりだ。

 この世界、一体どうなってるんだろ。
 考えれば考えるほど、訳が分からなくなってくる。

「ただいま、姉上」
「ケンタ、おかえりなさい」
「今日もシュン王子から」

 差し出された花束に、今度はわたしの顔がすんっとなった。

 ケンタは生徒会で執行部員をやっているので、生徒会長のシュン王子とも親しい間柄だ。

 花束ってね、大きいやつだと重量スゴいんだわ。コレで山田を殴る想像だけして、おとなしく受け取った。

「それで姉上。明日は休日だし、シュン王子がぜひ見舞いに来たいってさ」
「まぁ、それは光栄ね」

 ちっ、山田め余計なことを。城にこもったまま出張ってくんな。