「じゃがそんな王子にもとうとう運が巡ってきよってな。あの日のシュンは、まるで雷に打たれたようじゃった」
「まぁ、雷に? よほどのことが起きたのですね。シュン様がお変わりになったくらいですから」
「かーっかっか、まさにその通りじゃ。さもなければ、ハナコ嬢は今ここに座っておらなかったであろうしな」

 え? どうしてそこでわたしが出てくるの?
 分からないって顔してたら、リュシアン様はイタズラっぽい笑みを向けてきた。

「あれはハナコ嬢がはじめて城にやってきた日のことじゃ」
「わたくしが?」
「ああ、ハナコ嬢に会ったときのシュンの顔といったら……ひと目ぼれとはあれを言うのであろうな。孫が恋に落ちる瞬間を目の当たりにして、わしも驚いてしまったわい」

 もしかしてビスキュイの怪我を指摘した日のこと?
 ビスキュイの命の恩人扱いされてるけど、あれは認識違いというか、山田が勝手に思い出を美化してるだけなんだよね。

「ビスキュイの怪我の件はシュン様の勘違いで……」
「おお、そんなこともあったな。あの出来事のおかげで、シュンのハナコ嬢への想いはますます(つの)っていったようじゃ」

 ますます募って……?
 はて? なんだか話がかみ合わないぞ。わたしが初めてお城に行った日の話なんだよね?
 ハナコの記憶だと、そのときにはもう王子と面識があったように思うんだけど。