いまさら態度を変えるのもおかしい気がして、大きく頬をふくらませた。
 リュシアン様もかっかっかと大きな笑い声を立ててくる。
 ひとしきり拗ねて見せたあと、わたしは一度立ち上がった。貴族としての所作で礼を取る。

「リュシアン様、改めてご挨拶申し上げます。モッリ公爵家長女、ハナコと申します。知らなかったこととは言え、これまでの無礼の数々をお許しください」
「なに、かしこまらずともよい。騙しておったのはこちらの方ゆえな」

 促されてまた椅子に座った。
 どっしりと構えているリュシアン様、貫録が全身からあふれ出しててさすが元国王って感じ。
 これまでヨボヨボっぷりは全部演技だったんだろうな。

「でもどうして校医をされているのですか……?」

 理事長が保健医やってるなんてさ。まして元国王が就くような職ではないんじゃない?
 理由が孫の山田が気になってとかだったら、じじバカにもほどがあるんですけど。

「前にも言ったがの、頭と体が働くうちはこの老いぼれも人様の役に立とうと思うてな。それに若者の青春をのぞき見するのは、なかなかに楽しいものよ」

 かーっかっかって笑うと、リュシアン様は一転、真面目な顔でじっと見つめてきた。