「ハナコ・モッリです。お呼び出しを受けてまいりましたわ」

 覚悟を決めて、重厚な理事長室のドアをノックした。
 理事長のリュシアン様には初めて会うから緊張しちゃう。
 王子である山田のおじい様ってことは、それはすなわち前国王ってことで。現役時代は威厳ある王様だったって、そんな話をよく大人たちがしてたっけ。

「待っていたぞ」

 ひとりでに開いたドアの奥から、落ち着いた声がした。

 何このイケボ!
 めちゃくちゃ好みの声なんですけど。

 どんなイケオジが待っているのかと、期待しながら部屋に入った。

(ん? 誰もいない?)

 見回しても人影はなくて。
 その代わり、書斎机の横に飾られたオナガドリみたいな置物が目についた。
 高いスタンド式の止まり木にいて、綺麗な尾羽根が長く床まで伸びている。

「まるで本物みたいね。剥製なのかしら……?」
「ひとを勝手に殺すな、失敬な娘だな」

 と、鳥がしゃべった!
 しかも魅惑のバリトンボイス!