「もう! 何なのよ、健太っ」
「だから姉ちゃんが今すぐ未希姉ぇ連れて来いって……」

 さほど待たずに、健太と手をつないだ未希がぱっと部屋に現れた。ネグリジェ姿だからやっぱ寝てたよね。

 ぬおっ、健太ってば頬が片方腫れあがってるっ。
 あれは問答無用で鉄拳食らったんだな。焦げた跡も残ってるから、電撃攻撃のおまけつきだったのかも。

「ちょっと華子、こんな時間に一体どういうつもり!」
「あは、ジュリエッタ様ってホントに松崎先輩だったんだぁ」

 ユイナの声に動きを止めた未希が、すっと真顔になった。
 さすがに未希も呼ばれた意味を理解したみたい。あ、松崎ってのは未希の苗字ね。

「長谷川……ゆい、な?」
「こんばんはぁ。お久しぶりです、松崎先輩」

 ベッドの上でくつろぐ姿に、未希の怒りの矛先(ほこさき)が健太へと移動して。

「健太、あんた……」
「未希姉ぇタンマっ、いま順を追って話すから!」