「にしてもこの部屋、花多くない? においがこもって逆に臭いんだけど」
「あー、山田がね、しつこく毎日贈ってくんのよ」

 花瓶に生けられた花が、ところ狭しとあちこち並べられている。
 王子からの花束をポイ捨てするわけにもいかず、仕方なくこうして飾ってるんだけど。
 日増しに増えてく花の山に、わたしも頭を抱えていたところだ。

「クサい。ムリ」

 未希は清掃魔法を使って次々と花を消滅させていく。

 この世界は便利魔法がいっぱいあるんだよね。でもハナコは魔力が弱くって、魔法がろくに使えないから残念過ぎる。

「こんなの律儀に飾らなくたって、枯れたって言えばどうにでもなるじゃない」
「いや、花に罪はないっていうか……」

 わたしもわりとドライな性格だけど、未希の容赦なさには時々オソロシサを感じてしまう。
 絶対に敵には回しちゃいけないという見解は、弟の健太と子供の頃から一致していた。

「で、どう? 調子は」
「うん、回復魔法のおかげで体の方は問題ないかな」

 でも頭ん中は絶賛混乱中。
 この先ギロチン行きが待ってるかと思うと、安眠なんかできるはずないじゃん。