いつまでも登校拒否ってるわけにもいかなくて。
 あの件はもう気にしていないし、だからこれ以上わたしにかかわらないで。
 そんな感じのことを上品な表現でしたためて、とりあえず山田に返事の手紙を送っておいた。

 その上で、今日から学園に登校再開。
 馬車降りたところで健太とは別れて、教室には行かずにそのまま保健室に向かった。

 あの日のお礼も兼ねて、手土産に日持ちする羊羹とカステラ持ってきたんだ。
 未希に頼んでとっておきのを作ってもらったから、ヨボじいによろこんでもらえるといいんだけど。

「先生、いらっしゃいますか?」
「おお、これはいつぞやのお嬢さん。また怪我でもなさいましたかな?」
「いえ、今日は先日のお礼に参りましたの」
「はて? なんのお礼でしたかのぅ?」
「そんな、おとぼけにならなくっても。(かば)っていただけたこと、わたくし心より感謝してましてよ?」

 気を使わせないよう覚えてないフリしてるのかな。
 王子にたてつくだなんて、雇われ保健医じゃ勇気もいったろうに。

「こちら、お好きかと思って」
「おお、これはプティ家の和菓子ですな。しかしなぜわしの好物をご存じで……?」

 ん? まさか本気で忘れてる?
 ってか、ヨボじい、ちょっとボケ入ってるんだったっけ!