「ジュリエッタ、よく来てくれたわね」
「お呼びいただいて光栄ですわ」

 あの日、泣きながらすがりつくわたしを面倒くさそうにあしらいつつも、未希はわたしのために時間を取ってくれた。

 怪我のこともあり、学園はしばらく休むことにした。ちょっと頭を整理したかったし。
 そんで今日は未希が放課後に、見舞いがてら家まで来てくれたってわけ。

 家と言っても貴族の屋敷だからバカでかい。社長令嬢だったころのわたしの部屋が、クローゼットの広さって感じだ。

「まずはゆっくりお茶でもしましょう」
「ありがとうございます、ハナコ様」

 公爵令嬢と伯爵令嬢の仮面を張りつけて、部屋へと招き入れる。
 メイドたちを下がらせると、ジュリエッタこと未希は部屋の中を物色し始めた。

「さすが公爵家、インテリアもキンキラキンでいらっしゃること」
「でしょ? なんかわたしも落ち着かなくてさ」

 華子時代にも通いのお手伝いさんくらいはいたんだよね。
 だけど今は着替えから何から、全部世話してくれる使用人が山ほどいる。常に誰かに見張られててヤな感じだ。