「泣いたと思ったら今度はお怒りのご様子。かっかっか、まるで百面相、ハナコ嬢は見ていて飽きませんな」

 笑いながらヨボじいが緑茶と茶菓子を差し出してきた。
 お、これジュリエッタんとこのいちご大福じゃん。
 日本で未希んちって老舗(しにせ)の和菓子屋だったんだよね。この世界でもジュリエッタのプティ子爵家は、和菓子事業を展開しててさ。

「わしのお気に入りでしてな。あんこが苦手でなければ食べてくだされ」
「こちらはわたくしも大好きですわ」

 ヨボじいの厚意に甘えて、遠慮なくいちご大福を頬張った。
 うん、薄い求肥(ぎゅうひ)に硬めのあんこ、いちごの酸味がナイスなバランス。ぬるめの玉露も最高級で、ヨボじい結構こだわってるな。

 ふふって思わず笑いが漏れた。
 甘いものひとつで復活しちゃってるわたし、未希が言うようにすごく単純だな。

「おかげで大分落ち着きました。ありがとうございます、先生」
「なに、わしは大したことはしておらんのでな」

 冷静になってくると、今後の問題が色々見えてきて。
 大勢の前で王子を殴り飛ばすとか、やっぱアウトな行為だったよね?