断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

 意味不明なセリフとともに、山田はガバっと身を起こした。その勢いで舞台を飛び降りて、迷いなくこっちに歩み寄って来る。

(ななななにっ、なんなの、やまだっ)

 劇そっちのけの山田に、みんな唖然としてて。
 わたしも驚きすぎて、椅子が倒れんばかりに立ち上がる。そのときにはもう目の前に山田がいた。

「ハナコ、わたしにはお前だけだ」
「え……?」

 真剣な山田に戸惑うしかない。
 どうしていいか分からなくて目を泳がせたとき。
 山田に唇を奪われた。

 一瞬何が起きたのかが分からなくって。
 近すぎてぼやけて見える山田の顔。頬に当たる冷たいレンズ。
 逃げられないよう、山田の手が後頭部を強く押さえこんでくる。

 それだけじゃない。腰に回された腕も、押し付けられた唇も。
 何もかもが乱暴で、こんな山田、わたし知らない。

「いや……っ!」

 バチンと乾いた音が天井高い体育館に響いた。
 山田は王子でわたしは公爵令嬢で。そんな置かれた立場とかぜんぶ真っ白になって、気づけばこの手で山田の顔を叩いてた。

「ハナコ……」

 頬を押さえ呆然とたたずむ山田を置いて、わたしは外へ飛び出した。
 山田が呼ぶ声とか観客のざわつきだとか。後ろから聞こえたけど、みんな無視して闇雲に走り続けた。