ん? なんか外で揉めてるな。
 山田がつけてくれた護衛が、誰かと激しく口論してるみたい。

「ちょっと、離してよ! わたし、怪しい者じゃないったら!」
「突然飛び出してきておいて何を言う! この不審者め、王家の馬車と知っての狼藉(ろうぜき)か!」
「わたしはシュン王子と知り合いなのよ! 王子に言いつけて、あんたなんか解雇(くび)にしてやるんだからっ」

 ゆ、ユイナ!? 馬車に立ちふさがったのってあんただったの?
 っていうか、どうしてそんな危険なマネを。

「離してったら! いい加減にしないと痛い目見るわよっ」

 護衛と押し問答していたユイナが、舌打ちしてこぶしをぎゅっと握りしめた。
 かと思ったら、手のひらがバチバチ放電し始めてるし。

(あの子、何考えてるの!?)

 力づくで王家の護衛を振り切ったりしたら、反逆罪に問われる可能性だってある。
 まして相手を傷つけた日には、さらに罪が重くなりそうだ。

「お待ちなさい!」

 気づいたら馬車を降りていた。ここはわたしが何とか収めなきゃ。

 止めようとしてきた御者のおじさんに、余裕たっぷりの笑顔を向ける。大丈夫なことをアピールしたら、おじさんはあっさりと通してくれた。

 優雅な足取りで歩を進めると、ユイナと護衛がつかみ合ったままわたしを見やった。