『……こさん……なこさん……のせいでご……なさい……お願い……なないで……』

 ――遠くで誰かが呼んでいる。

 いや、あれは泣いているんだろうか。
 聞いていてこっちまで哀しくなってくる。

 慰めてあげたくて、重いまぶたを何とか開いた。

(わぁ、イケメンだぁ)

 長すぎるまつげ。やさしいまなざし。透き通った肌。
 どれをとっても自分好みだ。

(もしかして天使なのかな……)

 非業(ひごう)の死を遂げたわたしを不憫(ふびん)に思って、神様が気を利かせてくれたのかもしれない。
 わたしのほっぺたに向かって、天使から大粒の涙がこぼれ落ちてくる。

(ごめんね、もう、手も動かせないや……)

 あったかいしずくを頬に感じながら、わたしはゆっくりと目を閉じた――


「って、しょっぱっ!」

 口の中がいきなり塩辛くなって、がばっと体を起こした。途端に後頭部に激痛が走り、起きかけた体を元の状態にあおむける。

「もぉいったぁ……って、や、山田っ!?」

 目の前になぜかドアップの瓶底眼鏡。てか、なんでわたし山田にひざ枕されてんの!?

「ああ、よかった、ハナコ、ハナコ……」