お風呂セットを手に、未希と一緒にロッジの廊下を進む。

 はぁ、さっきはさんざんな目に合った。
 手取り足取り腰まで取られて、山田がちっとも離れようとしないんだもの。おかげで転ばず滑れるようになったけど。

「ねぇ、ジュリエッタ。念のために聞いておくけれど、ラウンジやゲレンデであったことって……」
「すべてハナコ様のお察しの通りですわ」

 未希にいい笑顔を返されて、こっちは顔が引きつっちゃったよ。
 攻略対象たちに囲まれたり、山田にスキーを教えてもらったり。これって全部ヒロインがこなすイベントだったみたい。
 なのに肝心のユイナときたら、最後まで姿を現さず仕舞いでさ。

「あの子、何を考えているの……?」
「確かに不自然ですわね。自分からルートを選んでおいて」
「詳しい内容を覚えていない、なんて可能性はないかしら」
「どうでしょう。彼女の性格を思うと……」
「そうね。その線は薄いわよね」

 前世でもユイナって金と権力には目がなかったからな。
 用意周到で、狙った獲物を手に入れるためなら手段を選ばないって感じだったし。ゲームとは言え、王子ルートとかいちばんにやり込んでそう。

「もしかしてメインイベントに賭けているのかしら……」

 これから雪山遭難イベントが待っている。寒さで体力必要そうだし、万全の体制で(のぞ)むつもりなのかも。