「シュン王子、次の予定が差し迫っています。そろそろ準備に取りかかりませんと」

 ダンジュウロウが手帳を広げてスケジュールを確認してる。そうやってると副会長って言うより、優秀な秘書って感じだな。

「うむ、次はスキーの時間だったか?」
「おっしゃる通りです。みんなも着替えたらゲレンデに集合してくれ」

 お、とうとう始まったな、雪山イベント。
 当然、ゲレンデでもイベントが待っているわけで。

『きゃ~、王子、転んじゃう~っ!』
『ふっ、しょうがないやつだな。わたしが手取り足取り教えてやろう』
 的な、定番の密着イベントだ。

「きゃーっ、ソコおどきになって! わたくし転びますわっ」

 な、なんでわたしがすっ転んでるんだ!?
 ていうか、前世ではスキーもスノボも得意だったのに。ハナコの運動神経、なさすぎでしょ。

「いたた、ですわ……」

 見事に雪の壁に突っ込んで、やっとの思いで体を起こした。
 む、スキー板ついてると、うまく立ち上がれないぞ。何気にハナコ、体もカタすぎなんじゃ。

 遠くから誰かがスノボで近づいてきた。颯爽(さっそう)と助け起こされて、腕にぎゅっと抱きしめられる。

(やだ、長身イケメン!?)

 華子、恋の予感!
 白い歯をきらりと光らせて、そのイケメンが黒いゴーグルを押し上げた。

「大丈夫か、ハナコ。安心するといい。このわたしが支えてやるからふたりきりで練習しよう」

 ってか、山田かよっ。
 わたしの大事なトキメキを返してっ。

 くそぉう、お前なんか瓶底眼鏡の形のまま、一生雪焼けが残ってしまえっ。