「ねぇ健太、ユイナに紅茶を注がれた直後の王子ってどんな反応だった?」
「いろんな意味で普通かな? 立場的にいちばんに入れられて当然って感じでさ。あ、でもやっぱおかしいな……」
「おかしいって何が?」

 山田なんてはじめっから頭イカレてるし。
 存在自体がもはや理解不能だ。

「ヒロインの入れた紅茶を飲んだあとに王子が言うセリフがあるんだけど。そこから本格的に王子ルートが始まるはずなのに、シュン王子はそれを言葉にしなかった」

 それ以前にさ、山田のヤツ紅茶に口すらつけなかったみたいじゃん。ユイナがひどいって文句言ってたし。
 やっぱ瓶底眼鏡の奇行はゲームの強制力の上を行ってるな。

「ちなみにゲームで王子はどんなセリフ言うの?」
「確か『お前の入れた紅茶は格別だな』とか、そんな感じだったはず」

 ん? それってどこかで聞いたような……?

「まんま、ハナコが言われたセリフじゃない」

 うそーん、ホンマや。

「姉ちゃんに? シュン王子がそう言ったの?」
「で、でも、山田が勝手にわたしのカップ奪って飲んだだけだし」
「だけどそれってさ、ハナコが王子ルートに入ったってことなんじゃ?」
「むしろシュン王子が姉ちゃんルートに入ったとか?」
「やめてよふたりとも! 縁起でもないっ」

 おのれ、山田め。お前がおかしな言動をするから、訳が分からなくなってきたじゃんかっ。