わたしはそこそこ歴史がある会社の社長令嬢だけど、ゆいなの家は成り上がりの金持ちだ。
 で、さっきから名前が出ている山田はというと、超大財閥の御曹司。

 家柄は良く、成績は常に学年トップ、スポーツもできて、その上高身長だ。男女問わず人気も高いとくれば、山田は非の打ちどころがないハイスペック男子と言えるかもしれない。

(瓶底眼鏡を除いては、ね)

 山田はとにかく冴えない風貌(ふうぼう)をしている。金にモノを言わせれば、雰囲気イケメンくらいにはなれるだろうに。

「今、ゆいなのことはどうでもいいんですっ! みんなの見ている前で恥をかかされて、山田先輩がどれだけ傷ついたか分かってるんですかっ」

 大声でぷんぷん怒るゆいなとわたしのことを、周りの生徒たちが興味津々に眺めている。

(ははーん。これは山田を大切に思ってますアピールを、人づてで本人に伝えるためのパフォーマンスね)

 大財閥の社長夫人の座をゲットするために、本気モードを出してるってワケだ。

 山田もわたしも卒業を目前に控えている。ユイナの頭では大学まで追いかけていくのは無理なのだろう。接点がある今のうちに、自分のものにしようと相当焦っているに違いない。