「……」



無音が一瞬空気を包んだが、背後にただならぬ雰囲気を感じる。




目の端で姿を確認しようとするけど、肩まである髪が邪魔をして見えない。



けど、後ろに人がいることは気配で分かった。




「動くな、動いたら~……ころす」



やる気のない声とヒヤリと喉に冷たい感触。
それがナイフだと気づいたとき、私の目線は上を向いていた。



フードを深く被った男は、影を纏いながらも笑みを見せる。




「目が合っちゃった……こんなに嬉しいことはないネ。
 感動して、間違えて首切っちゃいそうだ」



「……っ」



「あー……しないしない。そんなに怯えた目で見ないでヨ、久しぶりなんだから」




さっきから何を言っているのか良く分からない男が、一人で納得したように私を見ては何度も頷く。

ナイフはまだ、喉に当てられたまま。



飲み込めない状況に、ごくりと唾を呑むと、男は突きつけていたナイフを動かした。


血が垂れているのが分かる。


だけど、痛みよりも背後にいる男の存在に恐怖が勝ち、今にも意識を失ってしまいそうなほどの緊張感が押し寄せてきた。