相楽さんの送り迎えがなくなったぶん、わたしがひとりでいるときの監視の目は厳しくなるんだろうな……。



「もし、わたしが通学時に逃亡したら、相楽さんはどうなるんですか?」

「首が飛ぶだけだよ」


あっけらかんとそう言い放たれる。


下手な動きをしないように気をつけないと……。

そう思ったと同時。


ふと、あることに気がついた。


そういえばわたし、いつのまにか“逃げたい”って 考えなくなった。

あれだけ必死に逃亡の計画を練ろうとしてたのに……。



相楽さんとの生活に慣れきってしまったから?

絆されてしまったから?


思えば……お母さんのことを思い出す時間も極端に少なくなった。



記憶が新しいものに塗り替えられていく。


このまま、過去にできたら、いいのに……。



──『冬亜だけが頼りだよ〜、大好き!』



思い出すと、やっぱりまだ胸が痛い──────。