はいはい、こちら中野通交番です。 ただいま就寝中。

 昔は女の警察官も赴任してたんだそうで、その頃の写真も倉庫に残してありました。 ずいぶんと埃をかぶってるけど、、、。
よく見ると今でも本部に居たような、、、。 でもそろそろ定年だよなあ。
 そんなことを考えながら椅子に座って本を読んでおります。 西村京太郎の小説ね。
これさあ、いつも思うんだけど時刻表をよくもまあ細かく調べてるよねえ。
 「ここでこの列車に乗り換えて何時間後にこの駅に来てまた同じ列車に乗るんだ。」 余程の鉄道マニアなんだろうか?
亀さんとあの頸部のコンビもいいよねえ。 惚れ込むわ。
 外は相変わらず静かですなあ。 たまには事件でも起きないかなあ?
と思ったら、、、。 「待てーーーーーーーー!」って声が聞こえる。
 (何だろう?) 気になってドアを開けてみると姉ちゃんがものすごい顔で走って行った。
「あの野郎、また何かやらかしたか?」 でもどっか違う。
 追い掛けられてるのは白い帽子をかぶった男の子。 「あいつら何をやってんだ?」
見ているとこの辺りをグルグル走り回っているみたい。 うざいから男の子を突き飛ばしてみた。
 「うわーーーーー!」 そこへやっと姉ちゃんが追いついたらしい。
「持ち逃げしたでしょう? 返しなさい!」 「持ってねえよ。」
「ごまかさないの。 あんたが持ってるのは見てたんだからね。」 「持ってないってば。」
 「じゃあ、これは何?」 姉ちゃんはズボンのポケットを指差した。
「これは俺の、、、、。」 「店に来た時は膨らんでなかったわよ。」
「それはそれは、、、、。」 「出しなさい。 警察には言わないから。」
それを聞いて俺は思わず吹き出してしまった。 「お巡りさんが笑ってるわよ。 どうするの?」
 その後ろのほうから川牟田さんも飛んできた。 「ここに居たのか。」
「ごめんなさい。」 やっと謝った男の子に姉ちゃんは思い切り拳骨を食らわせたから川牟田さんもびっくり。
「何もそこまでやらなくても、、、。」 「思い知らせなきゃダメなのよ。」
 「やあやあ、川牟田さん 何が有ったの?」 「あっすいません。 ショップでこの子がスマホをポケットに入れて逃げ出したもんだから、、、。」
「それじゃあ窃盗事件じゃないですか。」 「でもこの子は中学生なんですよ。」
 「一度、中に入ってください。 話を聞いてから児童相談所に通報しますから。」 俺、なかなかやるなあ。
それから2時間ほど話し合って児童相談所へ、、、。 「今回はこれで済んだけど次は無いからな。」
「はい。」 一応は話を聞いているらしい。
 児童相談所から連絡を受けたのか、母親が真っ青になって飛んできた。 「うちの子がそんなことをやるわけがないでしょう? 何かの間違いよね?」
「間違いだったらこんな騒ぎにはなりませんけど、、、。」 「何かの間違いよ。 お店の人がやったんじゃないの?」
「は? ちゃんと証拠も有りますけど、、、。」 「証拠なんてどうにでも出来るわよ。 さあ帰りましょう。」
母親が子供を連れて帰ろうとしたところに店長がやってきた。 「お帰りですか?」
「そうよ。 うちの子は何もしてないんだから悪くないわよ。」 「まあまあ、取り合えず証拠のビデオを見てから帰ってくださいな。」
「そんなの見なくても分かるわよ。 店の人がやったのをうちの子に擦り付けてるんでしょう?」 「あんたも往生際の悪い人だねえ。 証拠はちゃんと有るんだよ。 児童相談所にも通報されてるの。 それでも認めないんですか?」
 「うちの子はやってません。 絶対に濡れ衣よ。」 「分かりました。 では警察に被害届を出しますね。」
「勝手にしなさい。 どうにでもすればいいでしょう!」 母親は帰って行った。
「どうしますか?」 「取り敢えず児相の出方を見守ります。 それ次第で被害届を受理するかしないか決断しましょう。」

 それにしても世の中、変な親が増えたよなあ。 子供が可愛いのは分かるよ。
でもやったことはやったことだ。 認めさせないと後で後悔するぞ。
 騒動の後、姉ちゃんは疲れたのか座り込んでしまった。 そうだよなあ、あんだけ走り回ってたんだもん。
「落ち着いたら店に戻ってくださいね。」 川牟田さんもそう言って戻って行った。
 「疲れたわーーーーーーーーー。」 そう言って奥の椅子に座り込んだ姉ちゃんですが、気付いたら鼾をかいて寝てしまいましたわ。
 俺はショップに電話して「しばらく寝かせておきますから。」って伝えておいた。
その後、児童相談所から担当官が交番にやってきた。 「どうも訳が分からんのですけど、、、。」
「何で?」 「あの親はやってないの一点張りだし店のほうはやられたの一点張り。 どうすりゃいいのかね?」
 「じゃあ、これを見てくださいよ。」 俺はメールで送ってもらった動画をスマホで再生して見せた。
「うーーーん、これはやってるな。」 「そうでしょう?」
「この動画を転送してくれる?」 「あいよ。」
そんなわけで担当官は証拠を掴んで帰って行ったのであります。
 さらに一週間が過ぎて母親がショップに詫びてきたことを川牟田さんが教えてくれたからホッとしたんだよ。
強情っぱりはいかんなあ。 んでもって寝入っている姉ちゃんを起こさねば、、、。
 「おーい、帰るぞーーーーーー。」 「うーーーん、もうちょっと寝かせてよ。」
「アホか。 閉めるぞ。」 「やだやだ。 閉めないでよ。」
「じゃあ起きろや。」 「分かったから待っててよ。」
 姉ちゃんが起きるのを待って交番に鍵を掛けまして家に帰ります。 今日の姉ちゃんは静かでいいわ。
「ねえ良太。 今日も一緒にお風呂入ろうね。」 「帰ってからな。」
 いつものように暴れることも無く姉ちゃんは静かなんだよなあ。 不気味なんだけど、、、。
 家に帰りますと母ちゃんが居間で寝転がってテレビを見てます。 「夜飯は?」
「そこに在るでしょう。」 「え? もしかしてカップラーメンだけ?」
「たまにはいいでしょうよ。 楽がしたいもん。」 「いっつも楽してるように見えるけど、、、。」
「何だって? もう一回言ってみなさい。」 母ちゃんがムクッと起き上がったから大変。
「もう一回言ってみなさい。 良太!」 「マジで怒ってるわ。 逃げようっと。」
「待てーーーーーーー! こらーーーーーーー!」 角を生やしたペリカンみたいな顔で母ちゃんは走り回ります。
「うーーーーーー、いつまで走らせるのさーーーーーーー?」 「勝手に走ってるだけじゃないよ。」
「何だって? 年寄りを馬鹿にする気かーーーーー!」 「自分で認めちゃったよ。 これじゃあ話にならんわ。」
 必死に追い掛けてきた母ちゃんは疲れ切ったのか昆布茶を飲み始めた。 「自分の年も知らないで、、、。」
「あんたが余計なことを言うから悪いのよ。」 「すんまっそん。」
「いいからこれからは自分で食事を作りなさいよね。 お母さんは疲れたわ。」 「やっと?」
「やっとって何よ? やっとって?」 「姉ちゃん 火に油を注いぢゃダメだよ。」
「ごめんごめん。 考えてなかったわ。」 「二人ともそろそろ家を出ていかないか?」
「そうねえ。 じゃあ明日にでも出ていくわ。」 「何処に行くんだよ?」
大発表をしてしまった姉ちゃんに俺は焦って聞いた。 「交番よ 交番。」
「んまあ、、、。」