夕食を済ませてのんびりしていると姉ちゃんが俺の部屋に入ってきた。 「何課用?」
「冷たいのねえ。 可愛がってくれるって言ったっしょ?」 「そんなこと言ったかなあ?」
「とぼけてると八百屋のおばちゃんに、、、。」 「ワワワワワ、それはやめてくれ。」
 「でしょう? だったら可愛がってよね。」 「生姜が無いなあ。」
「何だって?」 「しょうがねえなって言ったんだよ。 ちゃんと聞きなさい。」
「何ヨ 偉そうに。」 そう言って姉ちゃんは俺の膝の上に乗ってきた。
 「何処を触っても何をしてもいいわよ。 あんたの物だから。」 「怖い姉ちゃんだなあ。」
「何だって?」 小声で言ったのにちゃんと聞いている怖い姉ちゃんだ。
「何でもねえよ。 タラコ目。」 「タラコか。 美味しそうじゃん。」
 そうなの。 姉ちゃんは訳分らんうちに俺を飲み込んでしまうんだ。
「こいつと結婚するのかなあ 俺?」 「いいじゃない。 あんたの子供を育ててあげるわ。」
「いいよ。 貧乏人が増えるだけだから。」 「何で?」
 「あの総理大臣を見たろう? あいつはなあ自分さえ良ければそれでいいんだよ。」 「政治家なんてみんなそうじゃない。 あのおばさんだって結局は文句すら言えなかったんでしょう? だらしない。」
「保守派だとか何だとか言っても結局は自分だけを守りたいんだよ。 だから30万じゃ足りないなんて平気で文句を言う。 あれじゃあ政治家とは言えんよ。」 「あんたもたまにはいいことを言うのねえ。 政治家になったら?」
 「今の日本で政治家になる気なんてさらさら無いよ。 夢も希望もお願いもありゃしない。」 「そうか。」

 さてさて、いいだけイチャイチャした俺たちは沸かしておいた風呂にやってきた。 「さあ今夜も思いっきりあったまるぞーーーーー。」
「元気いいのねえ。 あんた。」 「そりゃそうさ。 頭の上の人たちは馬鹿ばっかりなんだから。」
 「頭の上ってあたしも入ってるの?」 「あんたは足の下。」
「ひどーーーーーい。 こんなにかわゆい姉ちゃんを捕まえて足の下だって。 訴えてやるーーーーー!」 「誰によ?」
「八百屋のおばちゃんよ。」 「待て待て。 あのおばちゃんだけはやめろ。」
「でしょう? だったら可愛がってよね。」 「しゃあねえな。 姉ちゃんには勝てないわ。」
「勝とうとするのが無理なのよ。 分かって?」 「はいはい。」
 そんなわけで今夜もまたお風呂の中でエッチーーーーーをやるのでした。 ご苦労さん。
すっかり疲れてしまった俺はそのまま部屋でゴロゴロと寝転がっております。 まだまだ夜は肌寒いのに、、、。
 トントントン。 誰かがドアをノックしてます。
トントントン。 「うっせえなあ。 こんな夜中に邪魔するんじゃねえよ。」
 うっすらと目を開けてみると、、、。 見慣れない軍帽をかぶった男がじっと睨んでおります。
(何だ、あいつは?) どう考えても見覚えが無いのでそのまま寝入ることにしましたが、、、。
 朝になっても奇妙な記憶が邪魔をして起きる気になれません。 そこへ姉ちゃんが飛んできました。
「こらーーーーー! いつまで寝てるのよーーーーーーーー!」 「何だよ朝から?」
 「朝ご飯作ってよ。 お腹空いたから。」 「自分で作ってよ。」
「何言ってるの? ご飯は俺が作るって言ってたでしょう?」 「作れないならコンビニで買えばいいじゃん。」
「あっそう。 八百屋のおばちゃんに、、、。」 「分かった分かった。」
 面倒くさい姉の頼み、聞かないわけにもいかないからフラフラと台所へ、、、。 「あんた 何か付いてるよ。」
「何が?」 「何か赤い物が、、、。」
 そう言われてふと考えた。 (そういえばあの男、腕から血を流してたな。)
「幽霊を見たんだよ。」 「えーーーーーーーーー?」
 驚き過ぎた姉ちゃんはそのまま吹っ飛んで壁に激突しました。 「何もそこまで、、、。」
「だってだってだって、、、幽霊怖いもん。」 「あんたのほうが余程に怖いわ。」
「何でよーーーーーーー?」 「ほらほらまた激突するぞ。」
 朝から姉ちゃんがやらかしてくれるもんだから居間は大変なことに、、、。 「まったくもう、、、。」
「しょうがないでしょう? 幽霊嫌いなんだから。」 「そんなこと言ったってあんたも死んだら幽霊になるんだぞ。」
「あたしはならないもん。」 「じゃあ何になるのさ?」
「可愛い可愛い雀よ。」 「アホー アホー。」
 「何よ? 私がアホだって?」 「俺じゃねえよ。 カラスだよ。」
「あんたしか居ないのに?」 「そんなことはどうでもいいから仕事に行こうぜ。 姉ちゃん。」
「うわ、逃げたぞーーーーーー。」 騒いでいる姉ちゃんを放置して俺は家を出ますですよ。
ほんとに疲れるんだからなあ、姉の世話は。 誰かに替わってほしいわ。

 なになに? 同性婚を認めないから慰謝料を払えってか?
そんな無茶苦茶な話が有るかってんだ。 そもそもなあ、同性婚なんて認めるわけが無いだろう。
 そんなのを認めたら戸籍のシステムが壊れちまうわ。 トランス婚と同じでな。
だからそういうのは事実婚でエンジョイしてなさいよ。 自分らだけでな。
 騒ぐからおかしなことになるんだ。 勝手に騒いでおいて裁判まで持ち出すやつに関わってる暇は無いんだよ。
どうしても嫌だったら同性婚を認めている国へでも引っ越すんだな。 それしか無いと俺は思うよ。
 だって同性婚にしろトランス婚にしろ騒がれ始めたのは最近のことでどう対処するかその方向性すら見えてないんだ。
そんな時に「気に入らないから慰謝料を払え!」って叫ばれてもどういう理由でどういう条件で払えばいいのか国だって分からないんだよ。
国が方針を決められないのに裁判所が慰謝料を選定するわけが無いだろう。
 これだから騒ぎ隊は困るんだ。 国も社会もどう受け止めていいのか分からない状態で被害者だとか差別されてるだとか言われても困るよなあ。
まあねえ、そうやってカナダで難民認定されたおめでたい人たちも居るけどさあ、晩年になって帰りたくなっても家も無いんだよ たぶん。
それに難民認定されたんなら国が受け入れるわけが無いよね。 勝手に被害者だって言ったんだから。
 今は若いから何も分かってないだろう。 でも60 70を過ぎてみな。 嫌というほど思い知らされるから。

 さあ今日も暇な交番で仕事をしましょうか。 無線も静かだし誰も来ないしいいかもなあ。
中野通はね劇場と反対側には駅前通りが有るのよ。 この辺りよりは賑やかだなあ。
路線バスも本数は多いし、車もたくさん走ってる。 商店街もまだまだ賑やかだしねえ。
 たまに消防車もサイレンを鳴らして走ってくる。 救急車は夜中でも飛んでくるよ。
ドクターヘリも患者目掛けて飛んでくる。 河川敷に下りるらしい。
でも見たことは無いんだ。 呼ばれないのかな?
 交番の前ではいつものように年寄りがバスを待っておりますねえ。 センター行きだな。
相変わらずばあさんとじいさんが話し合っております。 平和なもんだなあ。
今日は雨が降る予報でもないしこのままいい天気なんだろうなあ。 昼寝したいわ。
 そこへ電話が掛かってきた。 「あの、、、スマホショップなんですけど、、、。」
「ああ、姉ならまだ来てませんよ。」 「おかしいなあ。 30分前にフラッと出て行ったんです。 てっきり交番に行ったのかと、、、。」
 「そうっすか。 気を付けて見ておきますね。」 「よろしくお願いします。」
販売員の中牟田洋子さんだ。 あんな美人にまで心配させやがって、、、。
 ところがね、その日は待っても待っても姉ちゃんが現れないんですよ。 変だなあ。
いつもならもう飛び出して帰ってる頃なのにねえ。 どうしたんだろう?
 午前10時。 いつもの巡回に出掛けますか。
いつものように劇場周りで巡回しておりますと、、、。 駐車場に誰か居ますねえ。
(不審者かな?) ここ中野通にもたまに不審者が現れるんですよ。
 そーーーーーっと近付いてみます。 相手も警戒しているようないないような、、、。
駐車場の隅っこには誰かが捨てていったベンチが置いてあります。 まだまだきれいなんだよね。
 そのベンチに座っているらしい人影をチェックしながら近付いて行きますが、、、。 「ワッ!」
「姉ちゃん ここで何をしてるのさ?」 「お腹が空いたからコンビニに寄ってたのよ。」
 「え? 朝あれだけ食っといて?」 「だってさあ足りなかったんだもん。」
「ショップの、、、。」 「ああ、知ってる。 心配してるだろうなとは思ったけど、、、。」
 「じゃあさあ何で電話しないんだよ?」 「スマホ置いてきちゃったから。」
「しょうがねえなあ。 落ち着いたら戻るんだぞ。 ほんとに人騒がせなんだから。」 「分かった分かった。」