今日も私は、一人で下校する。


 だけれどやっぱり先輩のことが気になって、昇降口で待ってみることにした。


 今日こそ鈴木先輩にしっかり話を聞いてみよう。


 もしかしたら、フラれてしまうかもしれない。それでもちゃんと話がしたい。


 そう不安と緊張がない交ぜになった気持ちを抱えながら、静かに先輩を待つ。


 すると、鈴木先輩の賑やかな声が聞こえた。


 あ!先輩、元気になったんだ!


 そう思って、「鈴木先輩!」と声を掛けると、その隣には知らない女子生徒がいて、先輩の腕に抱き着いていた。


「え…?」


 私は絶句してしまった。


 え、どういうこと?この方は誰?


 綺麗な黒髪に、明るそうな快活な笑顔、先輩のクラスメイトだろうか?


 それにしても距離が近いと言うか、恋人でもないのに先輩に触りすぎじゃないだろうか。


 その綺麗な女子生徒が、鈴木先輩に尋ねる。


「この子知り合い?」


 すると鈴木先輩は、平然とこう言ってのけた。


「いや?知らない子」


 私はその言葉を聞いて、身体が石のように動かなくなってしまった。


 先輩の口から放たれた、「知らない子」、という言葉が、胸にずどんとのしかかる。


 二人はさっさと昇降口を出て行くと、仲良さそうに歩いて行ってしまった。


 え?どういうこと?


 私は今起きた事態が飲み込めず、その場に呆然と立ち尽くす。


 鈴木先輩、どうして?どうして私のことを知らない子だなんて言うの?私と先輩は、彼氏彼女ですよね?


 鼻の奥がつんとしたと思ったら、私の頬に涙が伝っていた。


 先輩、どうして…。


 私の頭の中はその言葉だけで埋め尽くされていた。


 その時だった。