幼き日の記憶。

 太陽が登りきった時間、広い森の中で木の実を集めていた時だった。
 真っ黒で小さい犬のようなモフモフ動物が、強そうな獣達に囲まれていた。

「あの子が危ない――」

 手元に意識を集中させると私の手元が輝きだし、色とりどりの花達が出てくる。まだ量が足りない。

――お願い、花達よ。私に協力して。

 願うと花達は更に増えてきた。
 ありがとう。と心の中でお礼を言う。

 全集中して、花達をモフモフに向けて放った。

 睡眠成分が含む花達を放ったから野獣達は眠った。囲まれていたモフモフも。そのままモフモフを花で包み、浮き上がらせ、私の元へ来るよう花にお願いをする。

 シュルルと花達がモフモフを運んできてくれた。

 私はその子を優しく抱っこした。
 それから数日間、ご飯を食べさせたりしていた。けれども朝目覚めると、一緒に同じベッドで眠っていたモフモフは跡形もなく消えていた――。